資料にも、ラーニングファシリテーションをさせよう!
駆け出しのラーニング・ファシリテーターが、最初に学んだこと
書き手は、toiee Lab リサです。
私たちは「toiee Labらしい読書術」を開発しました。
現在、その読書術が学べるコース、ワークショップ開催に向けて準備をしています。
その中で、「なるほど!」と膝を叩きたくなる(腫れるぐらい)気づきがあったので、ここにシェアしたいと思います。ちなみに、元ドラマーなので、かなり高速に叩くと思います。200BPMの16分音符くらいでしょうか。すみません、余分でした。
さて、本題に戻ります。
今回の気づきを一言で書くと
「資料をうまく作れば、それが勝手にファシリテーターの役割をしてくれて、ワークショップの進行がすこぶる楽になる!」です。
逆に資料を下手に作ると、足を引っ張り、場を凍りつかせてしまいます。
「良い資料」「悪い資料」の違い
どうやって作ったらいいか?
私の失敗談を通じてお伝えしたいと思います。
ちょっと長いですが、お付き合いください。
ちなみに、このブログの下書きは、この文章の3倍以上のボリュームでした。これでもかなり短くしたつもりです。お付き合いくだされば嬉しいです。
仕事を通じて、成長するのだ、学ぶのだ!
いわゆる「toiee Lab式読書術」を形にする仕事の中で、新入社員である私の担当は、なんと「資料作り!」。
「そんな大役を仰せつかるなんて...ありがとうございます。」 「必ずや、立派にやり遂げて見せます。」
という封建制度バリの気合を入れて、仕事に望みました。
toiee Labは「教育」の会社です。
私は、その一員として「仕事を通じて、学び、成長するんだ!」と思い、何冊もの参考書に手を伸ばしました。書店での立ち読みも含めて、ざっとこんなラインナップ。
『伝わる[図・グラフ・表]のデザインテクニック』
『外資系コンサルのスライド作成術―図解表現23のテクニック』
『3分で一発OK!社内プレゼンの資料作成術』
『見てマネするだけ プレゼン資料のデザイン図鑑』
などなど...
そこから「ゲシュタルトの法則」「資料作成は、現場で起きているんじゃない。その前の「目的の明確化」から始まっているんだ!」などのトピックをリストアップし、資料作成を開始しました。
ビジネスシーンと、ラーニングの違い
私が手に取った書籍は、いわゆる「ビジネス書」です。ビジネスの現場で求められるのは、
明快、明快、明快
簡潔、簡潔、簡潔
無駄削除、無駄削除、無駄削除
効率、効率、効率
「なるほど!なるほど!」
新しい知識に出会う度、膝を叩いて喜びました。こうして、情報を大量にインプットして、資料作りをはじめました。
学ぶといえば「守・破・離」。そこで、ビジネス書の流儀に従い、資料作りの目的を決めました。
「参加者が、慌てず、混乱せず、読書法の種類と手順を理解できること。(つまりはミーシー?)」
今思えば、これが大失敗でした。
それもそのはず。
私たちが手がけているのは「学び」や「楽しさ」であって、「ビジネス」ではないのですから。
出来上がった「ビジネス型」ラーニング資料がこちら!
初めての割には...勉強の甲斐あって、ザ・ビジネス!って感じの仕上がりになったのではないでしょうか。
ちなみに、言い渡された締め切りは翌日。
モーレツ・ビジネス・スケジュールを乗り切り、なんとか仕上げました。
〜後日談〜
「締め切り与えないと、いつまででもこだわり続けるだろうと思ったから。」
テキトーに締め切り日言い渡されていただけでした。
toiee Labは、「教育」の会社です!
さて、以下のような試作品の資料を
マークバック・リーディング
Before
このように書き換えました。
After
図解を、循環型からプロセス型に変更することで、手順を明確にする意図がありました。
他にも、以下のように変更しました。
ビジネス的発想では、「循環図だけでは説明しきれない要素」があるため、その意図を伝えようと、発散型の図解を使うなど、工夫しました。
脱線リーディング
Before
After
ガラガラポン・リーディング
Before
After
この時の私は、「ビジネス書」に全身を支配されていました。
「無駄は、悪」
「迷わせるのは、罪」
「唯一の正解を伝えるのが外資系コンサルの仕事」
と思っていました。お前、いつから外資系コンサルになったんだ。
図解しなくていいけど?って言われました
意気揚々と、「図解資料」をチームにシェアしました。toiee Labのフィードバック会は、
Step1. いいところを見つけて、伝える
Step2. 改善点を意見として伝える
という手順になっています。手順に習って、メンバーからは
「薄いグレーって、映えるなー」 「新人、張り切ってるねー、いいねー!」 「初めての資料作り、お疲れ!」
よくよく聞いてみると、「資料がいい」とは言われていないことに気づきます。次のステップ「改善点を意見として伝える」が始まったら、次々とツッコミが入りました。(私以外、みんな大阪人です。)
「かっこよくなりすぎて、ムズイ、とっつきづらい」 「なんやったら、前の図の方がスッと入ってくるわ〜」 「凝りすぎやな、肩が凝るわー」 「ぶっちゃけ、箇条書きでもいいんじゃない?」
私「...(?)」
「正しい解釈をさせなくていいんだよね」
メンバーの会話の中から、ふっとこんな言葉が出てきました。
「この資料はさ、正しい解釈はこれです」 「この解釈以外は、間違いです」 「ちゃんと間違わないようにしてください」 「そんなメッセージが、ひしひしと伝わってくるんだよね」 「窮屈だよね」
そして
「いいじゃん、間違った解釈をされたって」 「それより、やってみて、振り返って、探求して、発展させられればいいんだから」
と言われました。
つまり、ラーニングのための資料には、ビジネスでは「無駄」と言って削ぎ落とされる
無駄なアイコン
無駄な色
曖昧な表現
難解で理解しづらく感じる説明
そういった「余白」や「解釈の余地」「あそび」が必要だということでした。
この時、私の膝ドラムは、激しく叩かれました。
私が学んだこと(まとめ)
無意識に、私の教育観は、「間違わないこと」と「迷わせないこと」となっていました。
もっと自由で、楽しくて、ワクワクする教育に共感して、toiee Labにやってきたというのに...。
初仕事を前に、気合が空回りしていたのかも知れません。
今回の資料は、「ビジネス資料」ではなく、「ラーニングを促進するための資料」でした。必要なのは、「遊び」「余白」「楽しさ」を盛り込むことでした。
さらには、正しい正解よりも、
「とりあえず、やってみませんか!」
と、背中を押すこと。そのためには、「唯一の正解なんてないんです。難しく考えず、私と一緒に学びましょう!」そんな気持ちを込めて資料を作っていくことが大事だと学びました。
完成した資料は、ワークショップの時に披露したいと思います(今、鋭意製作中です)。お楽しみに!
あとがき (がみの反省日誌)
初仕事を終えて
私は、チームのみんなから、いつでもどこでも、すぐ一人反省会をすることで知られています。
また始まったよ、反省会。ということで、あとがきの場をお借りして、今回の仕事を振り返っておこう。
・・・
初めての資料作りとはいえ、時間をかけすぎたかなぁ。
事前に知識を盛り盛りにインプットしたのが、よくなかったのかなぁ。
そんなことを考えながら、布団でゴロゴロしていると、本棚に眠っていた『エッセンシャル思考』(グレッグ・マキューン著) が目に止まりました。
本の書き込みをみると、2019年11月25日に読んだらしい。当時もそれなりに面白く読んだ記憶はあるけど、流行りのミニマリスト本かな?くらいの印象でした。
いざ、toiee Labで働きはじめて、マキシマムな仕事っぷりに反省していた私には、一度読んだはずの本が、新鮮味を帯びて訴えかけてきます。
「今、自分は正しいことに力を注いでいるか?」絶えず問いつづけるのが、エッセンシャル思考の生き方である。
(『エッセンシャル思考』p.21)
ラーニングの資料作りにおける正しさは、「正確さ」ではなく「遊び」にあった。
(すると今度は、「遊び」ってなんだ?とか考え始めて、ロジェ・カイヨワ著『遊びと人間』を読むかな、などと考え始めてしまう。頭硬すぎて、どうにかならないものかしら。)
私にとって正しいこと。
それはきっと、toiee Labに入社すると決めた初心に従うことだ。
「学びたかったけど、学べなかった人のために、今、自分は正しいことに力を注いでいるか?」
常に問い続けよう。
反省会までお付き合いくださり、ありがとうございました。
fin